手のひら王子様
お姉ちゃん
居候五日目。


「なぁ。桜菜」


「……なに?」


夕食のパスタを食べていたわたしの目の前で座っていた椋太朗がわたしを呼んだ。



何となくつけてたテレビからは、夏休みのレジャー特集と謳ったバラエティー番組が流れている。



それを見ていたからだろう。



「夏休みやのにどっか行かんの? プールとか……実家とか」


「…………」


またその話題か……。


夏休みの話にかこつけて実家の話題から切り込んでくるあたりが狡(コス)いわ……。


「……連れてったげる」


「えっ!! 俺!? どうしよっ!! イキナリ実家のご両親にご挨拶なんて緊張するやん……」


その場に立ち上がり、喜んだり困ったりしてる椋太朗は、


「連れてったげるよ? ……志倉邸」


「俺の実家やん!! 騙したな桜菜ぁ!! そんなん汚い大人がすることやぞ!」


わたしの答えを聞くなり大声を張り上げて怒り始めた。



喜んだり困ったり怒ったり……一人で忙しい奴……。



「アンタはちょっと大人になった方が良いよ」


「大人になるから教えて。なんで一人暮らしなん?」



……それが子どもなんだってば。



思わずため息……。
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