手のひら王子様
こう言って笑う椋太朗の顔は幸せ一杯のバカ全開で、



一気に全身の力が緩んでいくのがわかる……。



「なんでそんな例えになるの? わたしと百合菜の話なんだけど」



無駄とはわかりつつ、一応話の本題を椋太朗に再確認させる。



させた所で興味は無いんだろうけど……。


「それやったら答えは簡単や」


「はぁっ?」



答えって何?


またトンチンカンな解釈して、呆れるような例え話するつもり?




完全に呆れ顔で椋太朗を見下ろすわたしに、



椋太朗はいつもみたいに人懐っこく笑っていた。


「百合菜と桜菜がおったら、俺は間違いなく桜菜の傍にずっとおるよ」


「えっ……?」


「運動会でもなんでも、桜菜ががんばってるとこ全部見といたる」



予想もしていなかった答えに、今度はわたしの方が驚いてる。


びっくりして椋太朗を見つめるわたしに、



「寂しいのも悲しいのも辛いのも全部、桜菜が忘れられるまで俺が一緒におっといたるよっ」



椋太朗は変わらない笑顔を小さい体一杯で、わたしに向けてくれていた。


< 29 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop