手のひら王子様
仕方なく解放してやると、彼は手のひらに立ち上がって服を正し始めた。



確かに、オモチャにしては動きが細やかというか滑らかというか……やけに自然だ、



「こう見えても人間や、俺は」



にしても……何故関西弁?


自称人間って言われても、どう見たって普通の人間サイズじゃないし……。



もうどっからツッコミ入れていけば良いのかわかんない……。
頭の中が大混乱中だ。


「疑ってんな? ちゃんと支倉 椋太朗(りょうたろう)って名前もあんねんぞ」



だから何よ……。
思わず即座にそう言い放ちそうになったけど、うるさそうだから我慢する。


だいたいそんな自信満々な顔で名乗られても、それが何の証明になるってのよ……。



「こう見えても十八歳やし」



しかも、年上っ!?



大きさは違えど見た目はわたしと同じくらいの年齢だ。



それにしても、こんなに年上に見えない年上初めて見たよ。



「おまえは?」



「……槇 桜菜(さくらな)」



促されるまま、躊躇いがちに答えたわたしに、



「へぇ~。良い名前やな」



こう言って笑いかけてきた……。



喋れば喋る程大きさ以外は人間っぽくて、わたしの目か頭が誤作動してんじゃないかって気がしてくる。



「ねぇ」


「んっ?」


「……なんで手のひらサイズなの? アンタ」




< 3 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop