手のひら王子様
そんなチビの癖に何言ってんのよ……。


「チビ……」

「えっ!?」



面食らったようにわたしを見てる椋太朗を、滲んだ視界から消した。



そっぽ向いて目を擦ってたら、



「ガマンせんとき。ちゃんと泣き止むまで俺おるし」



いつの間にか両手一杯にティッシュを抱えた椋太朗が、テーブルのすぐ傍に立っていた。




「だからこっち向いて泣け。俺が拭いたる」



最後に泣いたのって何時だっただろ……。



昔から泣かないのがわたしの売りだったのに……。




バカのくせに、



「ほら、顔向けて」


たったの一言で、




アッサリ泣かしたりしないでよね……。
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