手のひら王子様
夜になって……、



「ホンマに体が弱いんやなぁ。真夏に熱出すとか」



百合菜が熱を出した。



わたしのベッドに横たわり、



赤い顔で苦しげに肩で息をしている。



氷枕に頭を預けた百合菜の額に浮かんだ汗。



久しぶりに見た見慣れた光景だ……。



両親に連絡すれば、すぐにでも迎えに来るだろう。



それでも、



「朝まで待って……さくちゃん」



熱で潤んだ目でわたしを見つめる百合菜は、



切なげに微笑んでいた。
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