手のひら王子様
「妖精さん?」



夜中。



百合菜の看病をしながらわたしは、ベッドにもたれて眠ってしまっていたらしい……。



いつの間にか繋がれていた百合菜の手はやっぱり熱く、



氷枕を交換しようと、体を起こそうとしたわたしは動きを止めた。



「んっ? 何か欲しいん?」



わたしが起きたことに気付いていないらしく、百合菜は枕元に座っていた椋太朗に話かけていた。



「そうね。欲しい物は……丈夫な体かな?」


「俺には無理やなぁ~。俺、妖精ちゃうし」



冗談めかした百合菜の声に、椋太朗が笑いながら答えてる。



「じゃあ……わたしのお話相手になってくれる?」


「無理せぇへん程度やったらな」




ありがとう




柔らかい百合菜の声。



元気なときも、病気のときも、




百合菜はいつだって穏やかだった。



わたしはそれを、



苛立たしく感じながらも、



百合菜らしくて好きだった。
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