手のひら王子様
百合菜は静かに語り始める。



「わたしね、さくちゃんと二人でしたいことが一杯あるの」


「なに?」



相槌を打つ椋太朗の声に一息置き、



「お買い物行ったり、美味しいカフェ見つけたり……恋の相談したり、一緒にバレンタインチョコ作ったり……」



少し弾むような声で話を続けていく。



初めて聞く百合菜の小さな夢。




「普通の……どこにでもいる仲良しでお友達みたいな姉妹にね」



「……桜菜も喜ぶよ」



アイツも寄り道すんの好きやからなぁ~。


なんて付け加える椋太朗……。



確かに、帰り道の寄り道は好きだけど、


……なんで知ってるわけっ?



動くに動けないわたしを余所に、



クスクス笑い合う百合菜と椋太朗。




「でもね、これはただのわたしのワガママなのかも」



呟いた百合菜に、椋太朗は黙って次の言葉を待っていた。




「わたし、小さい時からあんまりお友達と遊べる機会が無くて……。調子が良い日はさくちゃんが遊び相手してくれてたの」



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