手のひら王子様
回りくどいのは嫌いだから直球で核心に触れた質問を投げかける。


そんなわたしの顔を、椋太朗は黙って静かに見つめていた。



あ……やっぱり触れちゃいけない話題だった?


本当はこの世に存在しない類の何かであるとか……?


「おまえが知らんだけで、世の中には色んな種族がおんねんや……」



こういう言い方されたら否定は出来ない。


だって実際にわたしの目の前に椋太朗が要るのは紛れも無い事実だし。

それに……世界中の種族全部を知ってるわけじゃないから、それを否定するのは気が引けるというか……。



「そのうち迎えが来ると思うから、それまで世話になるわ」



いや……今サラッと言われたけど世話になるって何?


仮に世話役が要るとしてもなんでわたし?



「ほらっ。帰るで、桜菜」



こう言って勝手に仕切りだした椋太朗が、めちゃくちゃ人懐っこい笑顔をわたしに向けてくる。



「……うん」



このまま道端に置き去りにして、全力疾走して帰ってやろうとか思ったけど……さすがにそんなことは出来ない。




もし置いていって次の日、道路でペッチャンコになっててもヤだしね。



そう思って仕方なく、わたしは椋太朗を連れて帰ることにした。



本人の希望で椋太朗をわたしの肩に乗せてやる。



「おまえ肌白いなぁ~。ええ匂いするし……」


「……落とすよ?」




そしたら早速このセクハラ発言。
やっぱり置いて帰れば良かったかなぁ……。



軽い不安とともにこうして、わたしと彼の二人暮らしが幕を開けたのだった。


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