手のひら王子様
百合菜の言葉で、わたしはゆっくり記憶を呼び起こした。



小さい頃から百合菜には、



いつもベッドの上で過ごしているイメージがあった。



調子が良い時は、わたしがそこへお人形を持っていってよく遊んでいた。



「きっとね、さくちゃんにはさくちゃんのお友達との約束があったんだろうけど……お母さんに言われて、わたしと遊んでくれた」




百合菜の言う通り……。



友達と外で遊ぶのが好きだったわたしに、



百合菜が元気な日は百合菜と遊んでやって欲しいって言われてて……。



「でも、さくちゃんはお外が好きだったから……」



どうしても外で遊びたくて、



百合菜の隙をついて外に逃げたことがある……。



「追いかけて外に出たら……やっぱり熱が出ちゃってね」



その日は両親からすごく叱られた。



わたしが百合菜と家で遊んであげれば……百合菜は無理して熱出さなかったって……。



「わたしが悪いのにさくちゃんが叱られたの……」




叱られたわたしに、



ごめんね?



謝ってきた百合菜に腹が立ったのを覚えてる。
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