手のひら王子様
「それからはさくちゃん、何も言わないでお家で遊び相手してくれた。……わたしがお気に入りのお人形使っても……妹なのに何も言わないんだよ……」



百合菜の声は段々涙混じりに変わっていった。



小さな嗚咽と鼻をすする声……。



百合菜は泣いていた。



「きっとお母さんに……ガマンしなさいって……言われてたんだと思う……。さくちゃん優しいから」





……違うよ百合菜。



また……アンタのせいで怒られたくなくて……わたしはガマンしてたんだ……。



わたしは……優しくなんかない……。



自分が可愛いだけの、



だだの狡い子だ……。




「……妖精さん」



ずっと黙って話を聞いていた椋太朗。



ねぇ……。



アンタの目に、わたしたちはどう映ってる?



「わたしのせいでさくちゃん……ずっとガマンばっかりで……。だからさくちゃんはわたしのこと……恨んでる」



昨日……百合菜を疎ましがっていたわたしは、




どんな風に見えてる?
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