手のひら王子様
必ずマメに連絡をとることを約束し、



お母さんと百合菜は実家へと帰っていった。




部屋に戻ったわたしは、



「……椋太朗」



ポケットから椋太朗を取り出して食卓へと乗せた。



わたしに呼ばれた椋太朗は不思議そうにわたしを見上げてる。



「百合菜の前で……庇ってくれてありがとう……」



声を出した途端、



ずっとガマンしていた涙が溢れ出した。


「……ホンマのことしか言ってへんよ」


「でも……わたしは百合菜のこと悪く言ったもん……」



手の甲で一生懸命涙を拭うわたしに、



椋太朗はいつの間にか両手にティッシュを持って歩み寄ってきた。



「だって桜菜は、恨んだりなんかしてへんかったやろ? それやったら、俺は嘘なんか言ってへん」




こう言っていつものバカみたいな満面の笑みを浮かべてる。



「椋太朗……ティッシュ」



食卓まで顔を寄せて、わたしは椋太朗に顔を近付けた。



「ヨシヨシ」



そんなわたしの涙を笑顔で拭ってくれる椋太朗の、



チビでデカい優しさに……わたしは救われてる……。



……やっと自覚したよ。
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