手のひら王子様
玄関に入るなり……、



やたらデカいシャンデリアに、



オシャレな螺旋階段……。



とにかくどこを見ても庶民のお家からかけ離れた空間で、



わたしは椿雪さんの影に隠れるようについて行く……。



「椋様が人形になった経緯は聞かれましたか?」



首を左右に振って否定したわたしに、



「実は……椋様は不慮の事故で、一ヶ月前からずっと意識が戻らないんです」



少し顔をしかめた椿雪さんが、ゆっくりと口を開いた。



不慮の事故……。



意識不明……。



どれもこれもわたしの頭の中で不安に変わっていく……。



じゃあ……椋太朗は、



椋太朗の意識は、



成仏でもしちゃったってこと?



「事故って……?」



椋太朗は、意識不明になるほどのどんな事故に遭ったって言うんだろう……。



不安げに椿雪さんを見上げるわたしに、



椿雪さんは顔をしかめたまま、



ゆっくりと腕を持ち上げた。




椿雪さんが指差した先。



そこにあるのは……、




「椋様は……アレから落ちたんです」



「…………」



螺旋階段だった……。
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