手のひら王子様
何気ないわたしの問いかけに椿雪さんは一瞬、驚いたように目を見開いた。



その理由がわからなくて、わたしはただただ椿雪さんを見つめ返した。




「……椋様からは聞かれてないんですか?」



椿雪さんからの問いかけに、わたしはゆっくりと頷いた。



「わたし……椋太朗のこと、ほとんど知らないんです」



残念だけど事実。



家族のことも、わたしに片想いしてたことも、椿雪さんが椋太朗にとってどういう人なのかも……。



わたしは何ひとつとして知らない……。




「椋様は高校生になられてからずっと、この家に一人暮らししておられます」




予想だにしていなかった椿雪さんの回答に、わたしの頭は上手く納得出来ない……。



だって椋太朗はそんなこと、一言だって言ってなかった……。



追いつかない頭の中から、



「どうして……ですか?」



やっと絞り出した言葉に椿雪さんはしばらくわたしを見つめた後、ゆっくりと口を開いた。



「旦那様に反発されたんです」

< 55 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop