手のひら王子様
「お父さんに反発……」



椋太朗の一人暮らしに、その理由。



どちらもわたしには意外でしかなくて上手く受け入れられない……。



「……椿雪さん」



「はい」



目を開ける気配のない椋太朗から、視線を上げる。




椿雪さんは、ただ真っ直ぐわたしを見て、次の言葉を待っていた。




「わたしも……親に反発して一人暮らしをしてるんです……」


「…………」



黙って頷いてくれる椿雪さんが、わたしの言葉を静かに受け止めてくれる。



「病弱な姉と、それに過保護な親にガマンばかりするのが嫌になって……」



でも、それは思い込みだった……。



ホントは百合菜だって辛い思いをしてた。



お母さんやお父さんだって……わたしを心配してくれている。



そんな簡単だけど大切なことも見えなくなっていたわたしを……独りぼっちだって思い込んでいたのを救ってくれたのは、根拠の無い自信でわたしを選ぶって言ってくれた椋太朗だった。



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