手のひら王子様
「前妻の連れ子である自分が、新しい家族の中に居ては邪魔になる。……なんて気を遣って、下手な芝居打ったんですよ」



つまりは椋太朗が反発したのは本心なんかじゃなく、新しい奥さんとお父さんの邪魔をしない為だったらしい……。




これを聞いて改めて思うこと。



「椿雪さん」



「……はい」



「やっぱり……取り消します。……椋太朗とお父さんが向き合えるように手伝うって言ったの……」



そんな必要無いんだもん……。



椋太朗はちゃんと、お父さんの気持ちをわかっている……。





いつ涙が出たのか……。



何も言わずにキレイにたたまれたハンカチを椿雪さんが差し出してくれて、わたしは思わず自分の頬に触れた。




濡れた指先でハンカチを握り締め、わたしは嗚咽をかみ殺した。




「桜菜さん」



初めて呼ばれた声に、わたしは潤んだままの瞳をあげた。




「アナタに椋様は必要ですか?」




椿雪さんの瞳をしっかり見つめ返しながら、わたしは深く頷いた。




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