手のひら王子様
「私なりの演出だったんですが？」



余裕たっぷりに微笑む椿雪さんを、悔しげに見上げる椋太朗。



やっぱり椿雪さんの方が上手だったみたい……。




「俺は早く桜菜と会いたかったのに……焦らしやがって」




なんて言いながら口を尖らしてる椋太朗が、わたしに手を伸ばしてきたのを素早く振り払った。




そんなわたしの態度に、驚いたようにこちらを見つめる椋太朗。




早く会いたかったなんて言うなら、下手な芝居で騙したりするんじゃないってのよ……。




「わたしは人形返しに来ただけですからっ」



わざとらしいくらい突っ慳貪に言って、向かい合った椋太朗から目を逸らす。




意識が戻ったなら、一番に知らせて欲しかった……。




完全に拗ねてるだけってのはわかってるけど……素直に椋太朗に笑いかけてやる気になんてなれない。





「……だから私は反対したんですよ。椋様」




ムッツリして知らん顔するわたしを不安そうに見つめる椋太朗に、椿雪さんがこう言い残して部屋から去って行く。


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