手のひら王子様
言われるままに教室に入り、頬杖ついて溜め息を一つつく。


彼女、なんて名前なんやろ……。
色白でちっこいし、きっとお花みたいな見た目通り可愛い名前なんやろなぁ……。


何度も何度も見つめてきたから顔はハッキリと脳裏に浮かぶ。


なんなら空で描けるんちゃうかってくらい。


……ま、美術2の俺には無理やけど。


そんなことを思いながらまた溜め息をつく。


最近の俺は寝ても覚めても彼女のことばっかり考えてた。



「……なんか最近支倉くん元気ないよねぇ」


「珍しいね、なんか悩み?」


放課後になった瞬間クラスメイトの女子に声をかけられた。


元気ないって……。
見ただけでわかるくらい俺ってわかりやすいんか?


「そんなにわかりやすいか?」


思わずポツンと呟いた俺に、目の前の女子たちは顔を見合わせる。


そして、


「うん。すごく」


「…………」


見事なハモりで答えやがった。


そんなワケないわ。


俺はそんな単純なヤツじゃなくて、クールでカッコイイ王子様なはずやのに!


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