手のひら王子様
「アイツらは俺の魅力なんか全然わかってへんのや」


「…………」


「俺はクールでシュッとした王子様みたいな男やで」


やのにアイツらときたら、支倉くんはバカ明るい関西弁王子だ……なんて言いやがった。


しかもめっちゃ笑いながら。


気に食わんわ……。


「椋様」


「ふん?」


運転席で黙って俺の愚痴を聞いてた椿雪が静かに名前を呼ぶ。


窓の外を見つめながらいかにも気の無い返事をする俺に、


「クールでシュッとした王子様はこんな所から女性を覗き見たりしませんよ」


「…………うるさい」


めっちゃ冷静なツッコミを入れて溜め息をついた。


だって帰りの車から彼女が一人でスーパーの袋を提げてんのを見つけてしまったんや。


危険が無いか見守るのも王子様のつとめやろ。


「これは覗き見とちゃう! これは彼女を見守って……」


「王子様でしたら見守るだけでなく、堂々と目の前で守って頂きたいものですね」


「ぅ……」


ズバリ核心に触れられてまんまと黙り込んでしまう。


また椿雪にやり込められた……悔しい。
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