手のひら王子様
「そんなん言ったって……どうすれば良いんかわからんねん」


「何がです?」


「彼女は……俺みたいなアホっぽいのん嫌いやったらとか思ったら……」


「自覚はおありだったんですね」


「うるさいわ!」


弱気な心の声を吐露したら椿雪にすかさずツッコまれて笑われた。


ホンマはわかってる。


自分がクールでシュッとした王子様とは掛け離れてるのくらい。


バカ明るい関西弁王子が俺にはお似合いなんや。


「椋様。私はあなたが好ましいと感じた女性が、そのようなことであなたをお嫌いになるとは思えませんが」


「……えっ?」


「あなたの魅力はあなたには勿体ない宝の持ち腐れといわんばかりの整った顔じゃありません」


「なっ!」


「……バカ明るく人懐っこい笑顔です。旦那様も亡くなられた奥様もあなたの笑顔と明るい性格を大変愛しております。もちろん今の奥様や弟君も」


いつもの淡々とした口調で言った椿雪がバックミラー越しにちらりと俺を窺った。


……いつもそうや。
椿雪はいつも俺をガキ扱いする風に呆れたような態度を見せる癖に……ちゃんと俺の大事な部分も見ててくれる。


ホンマ椿雪には一生頭が上がらんわ。


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