手のひら王子様
桜菜が可愛い過ぎるあまり、自分が立ってる場所のことを忘れてた。


「今度は桜菜さんまで巻き込むおつもりですか」


はっとしてる俺に椿雪はやれやれって肩を竦めながら螺旋階段をトントンと軽快に降りていく。


今回のは完璧に俺が悪い。
桜菜まで危ない目に遭わすとこやった。


「ごめんな桜菜」


隣でポカンと椿雪の背中を見てた桜菜にペコッと頭を下げた。


なんつーか情けないわ、ホンマ。


こんなんばっかりしてたらいつか桜菜に愛想尽かされてしまうかもしれへん。


しゅんとうなだれた情けない俺をチラッと桜菜が横目に窺ってる。


そして、


「いいよ。今に始まったことじゃないし」


「うっ……」


俺にとどめの一撃を食らわしてきた。


……ひどい。
桜菜までこんなこと言うなんて……。


悲しみにうちひしがれる俺を置いて螺旋階段に桜菜が足を伸ばす。


呆れて俺を置いて行かんといて桜菜!


なんて情けない訴えを口にしようとした時。
3段ほど降りた所でくるりと桜菜がこちらを振り返った。
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