手のひら王子様
「ど、どういうつもりっ!」


「親父が意識戻ったんなら顔見せろって言うから」


「だからってなんでわたしまで!」


機械音を響かせながら自動で開く門扉をわたしの手を握ったままくぐり、スタスタと広大な玄関に入っていく椋太朗の背中に声をかける。


お宅にいきなりお邪魔するなんて常識外れなこと出来ない。


それに、幽体離脱した息子に特注のお人形を作ってしまうようなお父さんだ。


きっとなんだか豪快な勘違いをされてしまうに決まってる!


そう思って玄関に入るのを必死に抵抗するわたしに、


「そんなん決まってるやん! 桜菜は俺の大事な……」


「いい! 言わなくていいから!」


満ち足りた笑顔で声を張り上げる椋太朗を必死に止めた。


こんなところで叫ばれたら家族の人が出て来てしまう。
そんな恥ずかしいご対面は絶対に嫌!

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