手のひら王子様
「ゴキブリなんか出た日には……俺、死ぬ」



蚊が鳩なら、ゴキブリは大型犬くらいに感じるのかも……。


あの大きさでも嫌なのに、犬サイズで来られたら……。



やめやめ……。



想像しただけでも気分悪い。



そう思ったら、泣きそうな顔してる椋太朗がちょっと哀れ。


「大丈夫。ウチ、出ないから」



……多分、ね。



「もし出たら……わたしがやっつけるよ」



わたしも大嫌いだけど……その時は、がんばる。



なんて軽く決意したわたしに、椋太朗は複雑な顔してる。



「桜菜が俺の為にってのは嬉しいけど……守られるってのは情けないなぁ」



何を考えてんのかと思えば……。



「針の剣とお椀のお船でも乗って旅でもする?」


「一寸法師かよっ! あぁ……でも、うちでの小槌欲しいなぁ」



ツッコミされてしまった……。



しかも、まだ何かブツブツ言ってる。



付き合いきれないから椋太朗をそのまんまにして、わたしは朝ご飯の用意を再開させた。






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