今度産む


「お兄さんの彼女になりたい」
「はぁ?」

今までの話を、こいつはきいていたのだろうか?

顔を上げると、不意打ちにキスをしてきた。

「おい!」
「へへ」

なんだろう。
ホント憎めないキャラだ。

「どうせ、わたしの言ってること冗談だって思ってるでしょ」
「当たり前だろ」
「本気だよ」
「バカかお前。オレの話、きいてたのかよ」
「きいてたよ。だから言ってんの」
「はぁ?」

ますますワケがわからん。

彼女はニッコリと笑う。

「だって、そんな経験してんだし、わたし、お兄さんとだったら幸せになれそうだし、わたしがお兄さんのこと幸せにしてあげるんだ」

いたって真剣にオレの目を見て言う。

あぁこういうバカな女、嫌いじゃねぇな。


「なぁ腹減らね?」
「うん。すいた~」
「じゃあ、どっか食べにいくか」
「うん!……ねぇ返事は?」
「あ?」
「うん。わたしと付き合ってくれる?」
「……ま、考えといてやるよ」
「うん、前向きに考えてよね!」
「ハイハイ」
「“はい”は一回でよろしい!」
「はいよ」


彼女が結婚相手に選んだのはおそらくはあの時の男らしいことはのちにわかった。
そして、彼女が無事に子どもを授かったことも。



今度産む 終



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