ねぇねぇ、聞いて。
そうだね。・・・・私だって、こんなことになるなんて思わなかった。そしてね、もう一回あったの。ハサミを向けられたこと。その時は少ししか切られなかった。でも、私の中で糸が切れちゃって。・・・・・・・・大好きな黒髪を染めたの。


「えっ!?あんなに、大事にしてたのに?」


うん。もう、この生活から抜け出したかった。髪を染めたら、何か変わるかなって。それだけで。でもね、染めたらみんな私に近づかなくなったの。まぁ、結果オーライって感じ?


「・・・・・・・染めたこと、本当は後悔してるんじゃないの?」


まぁ、してないって言ったら嘘だけどね。でも、今はそんなに嫌いじゃないよ?


「なんで?」


律希が、綺麗って言ってくれたから。
初めて会った時に。私、嬉しかったんだ。


「俺?・・・・・それだけ?」


うん。それだけでも私にとっては大きなことだよ。私の話はこれで終わり。聞いてくれて、ありがとう。


そう書き終わると律希は自分の手を見ていた。


私はどうしたのかと律希の服を引っ張る。


「・・・・・ごめん。辛いこと聞いて。俺、声が出ないこと軽く思ってた。でも、今の聞いて、全然簡単に直せることじゃないって思った。」

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