小さなポケット一杯の物語
私はバカだ。冷静に考えればその心配がある事に気付けたはずだった。
私は一番しっかりとしなきゃいけなところで大きな間違えをするところだったのだ。
親戚に保険金の使途を頼る事で茜だけでなく娘の安依にも災いが降り掛かる可能性があったのだから…。
男の言う事が本当に現実の未来ならば私は死ななくてよかったと思った。

「おじさんもやっと気付いてくれたみたいだね。自分が死んではいけないって事に。」

「そうだったな。君には私の心の内が分かってしまうんだったな。」

私は苦笑した。

「これでやっと話しやすくなったよ。これからの事が!」

男もまた笑ってみせた。
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