小さなポケット一杯の物語
「面と向かってそんな事言われた事がないから照れるよ。」

男は私から顔を背けて頭を掻いていた。

「おじさん!そこを右に曲がって!」

男は顔を引き締めた。

「もう少し行くと消防署が見えるんだけど、その近くに茜さんのお父さんが来ているはずなんだ。
本当はもっと、おじさんと茜さんのお父さんとでゆっくり話をさせてあげたかったんだけど、時間がないから…。」

男はそう言って暗い表情を浮かべた。

< 123 / 148 >

この作品をシェア

pagetop