小さなポケット一杯の物語
しかし、気付いた時にはすでに、それを謝る事すら出来なくなっていました。
茜が生まれて五年が過ぎたある日の事、事故で茜は両親を亡くす事となってしまいました。
茜を見たのは、その時の葬儀の日が初めてでした。茜は高校生になる父方の連れ子の兄に寄り添ってばかりいました。
しかし、茜が娘である事をまだ知らぬ私は、遠くから妻の冥福を祈る事しか出来なかったのです。
その上、それから先で慕っていた兄さえも茜は失ってしまっていたのです。
< 137 / 148 >

この作品をシェア

pagetop