小さなポケット一杯の物語
その時優さんは、かける言葉がなかったのか、何も答えたかった。
茜はね。そんな中でもお兄ちゃんとの思い出を話し続けていたんだ。
感情の趣くがままに話し続ける事でしか、その時の茜には、すがるものがなかったから。
きっと、短冊を一番上に飾れない切なさを話していた頃だと思う。
優さんの声で茜の心はまた現実の世界へと呼び戻された。

『確か裏に脚立があったわ 。』
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