小さなポケット一杯の物語

「おじさん、家族いんの？」

「ああ。」

「じゃあ死ぬ前にちゃんと家族に頼んどいた方がいいよ！“俺が死んだらちゃんとお祈りしてくれ”ってね。」

「頼まなくたってしてくれるさ。」

「あっははぁ〜！そういうのが一番危ないんだよ！自分だけは大丈夫ってタイプが！
覚えてた方がいいよ。死んじゃったら悲しんでくれるのは三ヶ月だけ！後は年々忘れられちゃうもんよ。」

「私の家族を君と一緒にするな！」

「おじさんホント何も分かってないね。死んだ後の世界ってね、下界の人間からコンタクトがあった時だけしか現世へ入り口が開かれないの。相手が望まない限り、こっちから心に呼び掛けたり手助けしたりは出来ないの！分かるぅ？要するに一方通行な訳よ。」