小さなポケット一杯の物語

「何を言ってるのかさっぱり分からん。君は一体何が言いたいのかね。」

「死んじまったらこっちの言いたい言葉はもう届かないって事！ノコされた家族のわがままは聞かされても、死んじまったやつのわがままは聞いてもらえないんだよ。
つまりぃ、死んじまった者からは遺された家族の言葉や行動を見守ることは出来ても、遺された家族にはこっちの世界を見る事も聞く事も出来ない。だから、都合のいい時にしか思い出してもらえなくなるわけよ。そのうち、いない事にも慣れちまうからね。寂しいもんだよ。」

男は相変わらずよく分からない事を言っていたが、話の中に不思議と妙に納得させられるものもあった。