ねぇ、俺の声聴こえてる?
何かしら弁解したほうがいいよな。
普通に、生徒手帳落ちたって言おうとしただけだって言えば、信じてくれるだろ、多分。
俺は自分の考えに1人で納得して、黒瀬に声をかけた。
「ねぇ、黒瀬さ……」
ガタッ!
話しかけた瞬間、黒瀬はまた盛大に後退ったので、周りの机や椅子が乱雑に動いた。
「あ、あ、わ、私……っ、ご、ごめんなさい……!」
「え!ちょっと……!」
引き止める間もなく、黒瀬は鞄を抱き締めて教室を出て行った。
「……そんなビビんなくてもよくない?」
誰もいなくなった教室で、半開きの扉を見つめながら暫く1人呆然と立ち尽くしていた。