ねぇ、俺の声聴こえてる?



……あ!


去っていく女の子の群れの間から、見知った女の子が歩いてくるのが見えた。

黒瀬だ。


「黒瀬さ、ん……、っ!?」


俺は立ち上がって手を振り、固まった。


「お、お待たせしました」


ペコッと頭を下げた黒瀬は、なんと、浴衣を着ていた。


薄いピンクに赤やオレンジなど明るい色の花が描かれた、可愛らしい浴衣だったけど、意外なほど黒瀬によく似合っていた。

髪も綺麗にセットされてて、かんざしまでしてる。


「かっ、かわい……」


思わず声に出していた。


すると黒瀬は真っ赤になって俯いた。

ん?なんで聞こえてるんだ?

ヘッドホンしてるのに……。


俺が首を傾げると、黒瀬は小さな声で言った。


「え、えと……今日は、音を小さくしていて……いちいち書くのは、面倒かと思いまして……」


……気遣ってくれたんだ。

ちょっと嬉しくて、にっこり笑って、軽く巻かれた後れ毛をそっと手に取った。


「そっか。ありがとう。……すっごく可愛いよ」


「……っ!」


余計に赤くなって、また俯いてしまった。


なんだ、黒瀬って案外普通の女の子じゃん。

照れちゃって、可愛いな。









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