ねぇ、俺の声聴こえてる?



「楽しくない?」


「……えっ?」


向かい合わせに座ってポテトを頬張る黒瀬に、コーラを吸い込みながら問いかけた。

黒瀬は一瞬固まって、ポテトから俺に目を向けた。

その顔は少し焦っているようだった。


「いや、黒瀬さんずっと俯いてるからさ……、帰りたいのかなって」


そう言うと黒瀬は首をブンブン横に振った。


「ご、ごめんなさい……楽しくないのではなくて、声が……」


「声?」


黒瀬の言わんとしてることが分からなくて首を傾げると、黒瀬は俯いて、膝の上で握った手を見つめながら言った。


「……音を小さくしていると、周りの笑い声とか、会話が聞こえてきて……それが、怖くて……」


笑い声とか会話が怖い?何故に?


頭の中に?が浮かぶ。

そんなん初めて聞いた。




……っは!

もしかして、それが常時ヘッドホンをつけてる理由なのか?










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