ねぇ、俺の声聴こえてる?



ショッピングセンターを出ると、空は暗くなってきていた。

時間も時間なので、俺はあらかじめ見つけておいた秘密の場所に向かった。

その間、黒瀬は一言も話さなかった。



細い路地を右に左に曲がりながら、目的地へと急ぐ。

俺が早歩きすると、黒瀬は息を荒げながら小走りをした。

浴衣だから動きずらそうだ。

でもごめん。急がないと始まっちゃうから。


心の中で謝りながら、路地を抜けて獣道へ出た。

ここまできたら、後はまっすぐだ。


「大丈夫?もう少しだから」


「……はい、」


かなり息があがって辛そうだけど、それでも黒瀬は文句ひとつ言わない。

他の子なら、もっと早い段階で根をあげてるだろうな。


携帯で時間を確認して、まだ少し余裕があったから、ゆっくり進むことにした。








< 31 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop