ねぇ、俺の声聴こえてる?
ショッピングセンターを出ると、空は暗くなってきていた。
時間も時間なので、俺はあらかじめ見つけておいた秘密の場所に向かった。
その間、黒瀬は一言も話さなかった。
細い路地を右に左に曲がりながら、目的地へと急ぐ。
俺が早歩きすると、黒瀬は息を荒げながら小走りをした。
浴衣だから動きずらそうだ。
でもごめん。急がないと始まっちゃうから。
心の中で謝りながら、路地を抜けて獣道へ出た。
ここまできたら、後はまっすぐだ。
「大丈夫?もう少しだから」
「……はい、」
かなり息があがって辛そうだけど、それでも黒瀬は文句ひとつ言わない。
他の子なら、もっと早い段階で根をあげてるだろうな。
携帯で時間を確認して、まだ少し余裕があったから、ゆっくり進むことにした。