ねぇ、俺の声聴こえてる?
今日は始業式だったので授業はなく、昼で終わった。
よし、帰ろう。
久しぶりの学校で疲れたし、今日は真っ直ぐ帰ろ〜。
軽く伸びをして鞄を肩にかけて帰ろうとすると、
「あ、あの……」
セミロングの明るい茶髪の女の子が、遠慮がちに声をかけてきた。
可愛らしい子だな。
「何?」
大体察しはつくけど気付かないふりをして笑顔で答えると、
女の子は恥ずかしそうな顔をしながら、俺を中庭に呼び出した。
「好きです!」
ほら、やっぱり。
告白だろうなって思ってた。
でもごめんな、1学期までの俺とは違うんだ。
だって俺には、
「ごめん、好きな人がいるんだ」
黒瀬がいるから。
今までなら特定の奴とか作らなかったし絶対断ったりしなかったけど、
こんな俺にも好きだって思えるような奴が現れたから。
もう遊びとかノリで付き合うのはやめるんだ。
「そ、そう……なんだ……」
俺の返答に、女の子は泣きそうな顔をしている。
その顔に、チクリ、と胸が痛んだ。
「ごめんね」
勇気出してくれたのにね。
今なら告白がどんなに怖いものか、よく分かる。
「……っ、ごめんなさいっ……!」
結局名前がわからないままだったその子は、瞳を潤ませながら走り去った。
まぁ、もう関わることも無いだろうし、いいか。