ねぇ、俺の声聴こえてる?
数日後。
珍しくいつもの場所に黒瀬の姿がなかった。
でも鞄は置いてあるから学校には来てるみたいだけど……。
ちょっと胸騒ぎがして、俺は黒瀬を探しに教室を出た。
取り敢えず1階から見て行こうと1階廊下をキョロキョロしながら走っていたら、
階段の陰にある体育館に繋がる扉の前で、ロッカーに隠れるようにしゃがみ込む人影が見えた。
「黒瀬さん……?」
「……っ、」
ゆっくり近付きながら呼びかけると、その人はビクッと体を震わせた。
「黒瀬さん、大丈夫?」
駆け寄ると、耳を両手で塞いでガタガタ全身を震わせる黒瀬。
あ、ヘッドホンしてない!
周りを見渡してもいつも黒瀬がしてるヘッドホンは落ちてないから、誰かに盗られたのかもしれない。
代わりになるものは無いかとポケットを漁ると、携帯に巻き付けていた、いつも俺が使ってる黒いイヤホンのコードが床に垂れた。
これでいいか。
「ごめん、今はこれしか無いけど……」
言いながら黒瀬の手を退けて、イヤホンを耳に差し込んだ。
「……あ、夏野、くん……」
すると黒瀬は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。