ねぇ、俺の声聴こえてる?
連れてこられたのは屋上だった。
風が強くて、せっかくセットした髪が一瞬でボサボサになってしまった。
「話ってなんだよ」
扉を閉めて、理紗の後ろ姿に声をかけた。
俺は保健室に行きたいんだ、用があるならさっさと済ませて欲しい。
理紗は振り向いて、俺を横目で睨んだ。
「あなた……友香里(ゆかり)に好きな人がいるって言って振ったんでしょう?」
「……友香里?」
って誰?
首を傾げると、苛立ったような声で数日前に俺に名前を名乗らないまま去っていった女の子の特徴を言ってきた。
あぁ、あの子か。
確かに好きな子がいるって断ったな。
「そうだけど、それが何?」
「好きな子って、黒瀬 妃菜でしょ?」
「っ!?」
なんで知ってんだ!?
理紗の口から出てきた名前に、驚いて目を見開いた。
「分かるわよ。顔に書いてあるわ」
マジでか……そんな分かりやすいんだ。
少し得意げな顔をする理紗にイラッとしながら、それを隠さず適当に相槌をうつ。
「……だったら何だよ」
「納得いかないのよ。なんで友香里があんな子に負けるのか」
……はあ?