ねぇ、俺の声聴こえてる?
いつもボロボロの着古した服を着ていく私を、皆は貧乏人だと罵った。
おまけに給食費も払っていなかったらしく、私への風当たりはよりいっそう強まっていくばかりだった。
来る日も来る日も浴びせられる罵詈雑言に、いつしか人の声そのものが嫌いになった。
中学を卒業してから私はスマホを与えられた。
高校は電車通学だから、私が何処へも行けないようにだろう。
入学式の前にノートや必要なものを買うためにもらっていたお金を少し残して、黒いヘッドホンを買った。
“声“を遮るために。
高校では、出来るだけ他人の声を聞かなくて済むように。
聞いたこともない歌をダウンロードして、大音量で聞いていたら声は聞こえなくなった。