魔王木村と勇者石川
そんな木村くんに石川くんがナチュラルに聞いた。
「どうした木村?」
「いや、いないなって」
そう言う木村くんの視線をたどって、石川くんが納得した顔をする。
「あーホントだ」
「どうしたんだろ?」
その視線はさっきまで座っていた魔女たちの席に向けられている。
嬉しい、可愛い。
けどそれじゃあ、ちょっと失敗なのだよ。
気づかれないうちに席に戻るつもりだったのに。
まあ、作戦自体に支障はない、か。
御手洗いにでも言っていたことにすればいい。
「まあ、この城で何かあるってことはないから」
そう鎌田くんがとりなすと、石川くんが眉をひそめる。
「いや。別に、心配なんかしてないんだが」
いや、可愛い。というか、かわいすぎじゃないですか。
ここでバンバンしたら自爆しちゃうんですけど、なに?
なにかな?
そっちはそういう作戦なんですかねねね?
本当にバンバンしそうな蛍に、
『落ち着け』
と、迷の言葉がテレパシーで送られてきて、
『はっ』
と、蛍はふと作戦中なことに気がついて我に返った。
『セーフ………』
これを口にしたら白山さんに“アウトです”と睨まれそうだが、素直にそう思った蛍である。