魔王木村と勇者石川
蛍を含め魔女四人は何やら立ち去り難いものを感じていたが、仕方なく魔女たちはそそくさとリュックを持つと、男子三人が見てないのを確認しつつ、そのままゆっくりドアをすり抜けて大広間から退散した。
宙にプカプカと浮くリュックを見た者はいないというわけだ。
「よし、作戦に成功」
迷は体を元に戻して言った。他三人もそれにならう。
「いやー、私こんな厚いドアをすり抜けるの初めてだったのできんちょーしました」
と、興奮したように言う誉ちゃんの手を白山さんがにぎる。
「私もですっ」
「まあ、居ないことに気づかれちゃったからねー」
「というか、蛍先輩!」
いきなりの白山さんに見られて、ドクンと心臓が跳ねる蛍。
「えっ、なっなに、なに、なにかな?」
「いや、そんなに構えなくても………よくバンバンしなかったなって思っただけなので」
「やっやだなー、そんなことするわけがなかろー」
「そうですか」
そのままスルー白山さんになったのを見て、蛍は息をつく。
そうか。まあ、そうだ。
透明になった状態でも、私の行動を全て把握するなんて、迷以外にはできない技。
ともかくセーフ………。