魔王木村と勇者石川
何となく、他の三人も作戦第一段階が成功して、ほっとした顔をしている。
全員がそう安心しきっていた時だ。
「あっ、あの」
突然聞いたこともない声が聞こえて、魔女四人はビクッとする。
四人はシンクロしてゆっくりと声の方にふりかえったのだった。
「あっあの、今…とっ突然あらわ…れ」
そこには、大広間の前を任された近衛さんの姿。どうやらさっきからいたらしい。
ナルホド。
ここは人間の城であるから、突然人が何もないところから現れたらビックリだろう。
「驚かせてすみません。でも、人のリュックを勝手に持ってくような怪しい者ではないので、安心してください」
迷がにこりとそう保証するが、その手はしっかりとリュックを握ってはなさない。
近衛さんも怪訝な顔で迷を見ている。
蛍はその様子を見て記憶を修正する魔法を使うことにした。
時間をかければ納得させることもできると思うが、そんなことをしている余裕はこの魔女たちにはない。
なぜなら、石川くんが給仕の人に新しい飲み物を頼むその前に、飲み物を用意してあげなければならないからだ。
「突然現れたことなんて忘れるんだよよよ?」
次の瞬間には、近衛さんの頭の中で、魔女たちはきちんとドアから出てきたことになっていた。