魔王木村と勇者石川
へなちょこパニック
その頃、大広間の魔王と勇者、そして人間の王はソワソワしていた。
「なんか、男の悲鳴聞こえなかったか?」
勇者がこの場を代弁してそう言うと、
「うん………」
と、魔王が眉をひそめる。
あの心配そうな超絶可愛い顔だ。
すると、考え込むようにしていたような人の王が、顔を上げて二人に言った。
「うちの近衛の一人のような気がする」
「それマジか、鎌田王?」
一同、沈黙する。
この城で危ないことが起こるなんてことはないはずなんだが、危険がなければ叫ぶこともないわけだ。
「あっ!」
突然、魔王が声を上げた。
「なっなんだ?」
「リュックがない………」
「あ?………マジか」
やっと気づいた二人。
普段は鋭いのに、すっかりまったりモードだったのか、魔女の気配にも全く気づかなかったようだ。