魔王木村と勇者石川
再び、大広間。
「とりあえず、城内全域の兵たちには伝わったようだ」
鎌田王は連絡無線で何やら話したあと、そう心配そうな顔の二人に言った。
「そうか」
「俺、行ってこようかな」
ひと言で返事をし、冷静な様子の石川くん。
そんな石川くんとは対照的に居ても立ってもいられないとでも言うような木村くんが続けた。
しかし、
「どこにだよ」
石川くんが呆れたようなちょっと不機嫌そうな声で、それをひき止める。
「………どっか?」
どうやら木村くんは、自分でも行き先をよく考えていなかったらしい。
そんな木村くんに、石川くんはため息混じりに告げた。
「止めとけ。俺たちはここで待とう。あいつらが何にも知らずにふらっと帰ってきた時、お前がいなかったら心配になるだろうからな」
「うん。けど………」
「俺も___」
さらに言いつのろうとした木村くんを石川くんは制す。
「俺も、心配だ」
珍しすぎる石川くんの様子に鎌田王が軽く目を見張った。