魔王木村と勇者石川
木村くんは不思議な人だと思う。
勇者をやることが面倒と言う石川くんが、自分から面倒ごとに巻き込まれようとするなんて言うから、本当に。
また石川くんも不思議な人だ。
クールだし、素直じゃない。けど、実は会ったこともない人たちにも、出会って間もない人にもとても温かい心を持てる人間である。
本人は否定するだろうけど。
魔王と勇者のこんな会話を、いったいこの世界の誰が予想できたというんだろう。
「ん」
魔王は小さく勇者に頷いた。
「じゃあ…今度こそ一緒に行く?」
「そうきたか………まあ、いいぞ。行ってやる」
そうして、二人は大広間の戸を開けようとした。
「ごきげんよーう」
怪しい四人の人間が、大広間の戸を先に開けて入ってくる瞬間までは。