魔王木村と勇者石川
けど、蛍と迷は絶対の自信があった。
蛍は太った男爵風の装いで、くるんとカールした髭まで付けてたし、迷は貴婦人のようなドレスを着ていた。
ちなみに、男の服は近衛さんに、ドレスは近くにあった誉ちゃんの部屋から拝借した。
それでも、顔を見れば多分分かってしまうと思い、仮面をつけたという完璧さ。
それが、なぜかバレている。
「そっ、そんなことありませんわよ~」
………確かに、貴婦人にしてはのんびりした“わよ~”は、迷で間違いないのだが。
「わたくしたち、“文学少女”というちゃんとした酒屋を営んでおりまして、こちらで文官をしています誉さまの頼みで、お飲み物をお持ちしましたったたたー」
一瞬の沈黙。
「……ああ分かった。そういうごっこ遊びがしたいなら、すればいい。けど、付き合うつもりはない。俺は木村と盗人を捕まえなければならん」
「盗人なら捕まりましたわ~」
「適当なこと言うなよ」
呆れを滲ませてちょっと怒ってる感じの石川くん。
でも、そこに国王鎌田くんのフォローが入った。
「いや、今なぜかすごくビビりながら連絡をくれた近衛が、盗人を捕まえたと言ってる。リュックも両方あるようだ」
「マジか………」
呆気に取られる石川くんに魔女たちは喜ぶ。
まさに、グッドタイミング!
ナイスだね、近衛さん。