魔王木村と勇者石川
「いやいや、これからうちのパンダがお入れしますんででで。ほらパンダ」
「はい、旦那さま」
パンダと呼ばれた白山さんは、真っ白のシャツに黒いベストを来たバーテンダーのような青年の出で立ちだ。
石川くんの空いたグラスにかっこよく微糖の缶コーヒーを入れる。
普通にバーテンダーぽい。
パンダだけど。
缶コーヒーだけど。
「どうぞ、コーヒー微糖でございます」
「いや、お前今日魔王城まで案内してくれた奴だよな?」
「それは妹です」
「は?妹がいるのか?」
「はい、百八十歳の」
「化け物だな。………うん、缶コーヒーの味だ。」
しみじみとそう言う石川くんは、それでもただの缶コーヒーをグラスで飲んでくれた。
「おい、木村もなんか飲んでやれば?」
ふう、と一息ついてから木村くんにも声をかけてくれた。
「あー、じゃあごめん。貰おうかな」
どうやら喉が渇いていたらしい魔王さま。口癖のごめんのあとに、受け取る意思を表明してくださった…!
「はい。石川さま、木村さまには何ををを?」
喜びを滲ませつつ蛍が問うと、当然のツッコミがきた。
「いや、木村に聞けよ」
「いえ、石川さまが木村さまに選んであげてくださいな~」
「は?………まあ、いいや。なに、無難にお茶でいい?」
「ダメですですです!」