魔王木村と勇者石川



「は?お前らが俺に選べって言ったよな」


「いえ、お茶はもうないんですよよよ」

「は?じゃあ、そのお茶の缶はなんなんだよ?」
 
「えっと…」



「毒です。」
 
思わず口ごもった蛍に、間髪いれずに白山さんのフォローが入った。


静かに、しかしハッキリと言い切る白山さん。ナイス!
冷静な表情には説得力があるぜ!



「………とんでもない、酒屋だな」


「……そんなわけなので、石川さまが木村さまに選べるのは、こちらのイチゴミルクか、こちらのイチゴミルクか、こっちのイチゴミルクになりますすすすー!」


「全部、同じイチゴミルクじゃねーか」


「さあ、お選びを!」


「無視かよ。じゃあ、…真ん中?」

「ホー、石川さまに真ん中のイチゴミルクを差し上げて~」


「はい。奥様」


少年誉ちゃんはトランクを置き、膝を折って石川くんにイチゴミルクを献上する。



「いや、木村こっちだし」



「いえ、石川さまがお受け取りを」

「なんなんだよ。ったく、はい木村」

「ん、ありがとう」


石川くんが木村くんのグラスにイチゴミルクを注ぐ。

仮面夫婦はそれを嬉々として見守った。マジックカメラもこっそり用意した。



「じゃあ、いただきます」

そう言って、いよいよ木村くんはそれにくちづける。



そして、その瞬間は訪れた。


< 132 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop