魔王木村と勇者石川
んな、感じで魔王と使用人の攻防が続き、なぜか途中で入ってきた魔女見習いの白山が冷静に言い放った。
「出発前までに冬城が奇跡的に準備が出来ていれば、連れて行けばいいんじゃないですか?」
奇跡的に、を強調した白山に魔王は同調する。
「それいい。そうしよう、白山さん」
かくして、話がまとまりそのまま解散となった。
そして、冬城は念願の“ケータイ”なるものがやっと手に入ると興奮して、置いてかれたら困ると眠れず、そのままオール。
が、はてさて、眠気覚ましに本を読んだのが運のつき。
一旦読書を始めると恐るべき集中力を発揮する冬城だ。
結果、太陽はすっかり真上で輝き、時計の二本の針は十二のところで重なり合っていた。
かわいそうに。
慌てて部屋を飛び出したが、姿は見えず、冒頭である。
「んー、まあんなことだろうとは思ってたよ」
「はっ、なんだよそれ。さかしー」
「いや、なんで突然…えっと白山さんだっけ?が出てきたのか、分からなかったのか?」
早本が、からかうようにそう言うが、まるで理解できない冬城は、また目がクリクリしてる。
その様子に弦野も面白がりながら言う。
「きっと蛍先輩の策略だろうね」
「は?」
弦野の言葉を理解できない冬城は、小さく首を傾げたのだった。