魔王木村と勇者石川
「大変だーーーっ」
木村くん、石川くん、鎌田くんが出てきたところで、蛍は叫んだ。
「どっ、どうしたの?蛍さん」
「あっあのね」
言いかけて蛍は言葉に詰まった。
みなさんの衣装が素敵すぎて死にそうなの。
「そのっ」
ほんと、殺人級の出で立ちだ。そうだカメラ。
「一枚一緒にいかが___」
「受講者の皆様が見当たらないのー」
危うく本音をもらしそうになった蛍を、迷が遮る。
運よく蛍の言葉は誰にも拾われることなく、迷の言葉に注意がいく。
「はーー?んなわけ、あるか。五百人もいたんだぞ。そう簡単に消えてたまるか」
「でも、起こってしまったのだよ!神隠しかなかな!とりあえず一緒に探して!」
気を取り直した蛍は台本どおりの台詞を若干大袈裟に言う。
「じゃあ、分かれて探した方が___」
「ダメーっ!」
どこかへフラッと行ってしまいそうな木村くんを捕まえる。
「ほっほら、木村くん、一人になったら絶対神隠しにあうよ!」
「えっと」
はたして、神隠しにあう魔王などいるのだろうか?
「………ん、まあそうね?」
素朴な疑問をそっと胸にしまって、木村くんは曖昧に頷いた。