魔王木村と勇者石川
ババーンと王の間に現れたのは冬城くんである。
ちなみに、それをハラハラと見ているのは早本くん。
王の間の周辺警備隊長である。
「すみません、魔王様。止めたんですが勝手にこいつが」
「ごめんっちゃーい」
「あー、いいの。いいの。…どうせ俺に威厳なんてないし」
「………」
この城の主であるはずの魔王木村くんの言葉に、誰もが沈黙する。
「なんか、ごめん……」
そして、その沈黙に意味もなく謝るのも木村くんである。
蛍は何か言わなければと思い、口を開く。
「あーーーっ!!!」
………いや、蛍ではない。
いくらなんでも、何も思いつかなかったからといって、あーっと叫ぶなんてそんな横暴なことはしない。
声の主は、
「冬城、お前こんなところにいたのかっ」
と、ボロボロの姿に成り果てた白山さん。